バクテリオファージMuは収縮性の尾部をもつファージのうち比較的小型で形態形成に関わるサブユニットの種類が少ないやや単純なファージである。このファージのサブユニット構造やサブユニット間相互作用を解析することによりナノメートルサイズの秩序だったタンパク質構造体の構築と構造変化についての制御の解析が可能であると考えている。 (1) 基盤サブユニットの精製と結晶化の試み 基盤はgp41からgp48までの8つのサブユニットで構成されていると考えられている。今年度までにこれらのうちのgp42をのぞく7つのサブユニットの発現系を整備が終了した。本年度は特にgp41、gp45、gp46について結晶化を試みたが、X線解析に使える結晶は得られなかったbこれらのような他のサブユニットと複合体を作るタンパク質は単独では凝集しやすく、溶解度が低い。いずれのサブユニットも結晶化を始める以前に凝集してしまうので、凝集体の形成を防ぐ条件を粘り強く探していく予定である。 (2) 基盤サブユニットと宿主菌体膜との結合の解析 gp45のC端ドメインを発現、精製し、水晶振動子マイクロバランス法を用いて宿主菌体膜との結合を観測した。菌体膜へのgp45の結合は観測できgp45が菌体膜を認識・結合するサブユニットであることを確定することができたものの、測定値のドリフトが大きく信頼性のある結合定数は得られなかった。また、gp45は以前に精製過程で宿主菌体膜に含まれる0mpC/0mpFとの複合体として精製されたことがあり、gp45が結合するレセプターは0mpC/0mpFである可能性が考えられていた。そこで0mpC^-、0mpF^-、0mpC^-0mpF-の菌を入手し、それらの菌体膜とgp45のC端ドメインの結合を同様に観測した。するとこれらに対しても野生型の菌体膜とほぼ同様にgP45が結合することがわかり、gP45が結合するレセプターは0mpC/0mpF以外にも存在可能性が示された。
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