研究課題
ダイニンはATP依存的に微小管上を滑り運動するモーター蛋白質で、重鎖・中間鎖・軽鎖から構成される1000kDaを超える生体超分子複合体である。鞭毛運動や繊毛運動、さらに蛋白質輸送や染色体分離運動を担うモーター蛋白質であり、その生物学的重要性は極めて高い。しかしながら、ダイニンの分子量が巨大であるが故に同じモーター蛋白質のキネシンやミオシンと比べて運動機構の解明が遅れている。細胞質ダイニンの微小管と結合する領域は、長いcoiled-coil領域によってATPの加水分解を行う球状ドメインと繋がれている。この微小管と結合するドメイン(coiled-coil領域を含む)はストークドメインと呼ばれている。我々は、まずダイニンストークドメインのX線結晶解析を行った。再現性良く棒状の結晶を得ることに成功し、ゆっくり3日間かけて結晶化ドロップの状態で抗凍結剤を導入したSe-Met置換体結晶を使って3.2A分解能の良質のMADデータを収集した。MAD法により初期位相を決定することに成功し、coiled-coil領域の電子密度図を得ることに成功した。ダイニンのcoiled-coilは、一本のαヘリックスが真っ直ぐな構造をしており、対照的にもう一本のヘリックスが非常に湾曲した構造をとっていた。現在、この特徴的なcoiled-coil構造と機能との相関を考察している。我々の結晶では、ストークヘッドの構造がハッキリしていないが、2008年Science誌にUCSFのR. Vale等のグループが世界に先駆けてマウス細胞質ダイニンのストークヘッドの結晶構造を発表した。今後は、Vale等の結晶構造を参照しつつ、主にcoiled-coilを使った情報伝達の分子機構に迫っていきたいと考えている。
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