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2008 年度 実績報告書

ヘモシアニンのアロステリック効果の分光学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20051016
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

廣田 俊  奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (90283457)

キーワード生体超分子 / 酸素運搬 / ヘモシアニン / 協同効果 / 銅タンパク質 / ボーア効果
研究概要

ヒトでは、酸素貯蔵と酸素運搬の役割はそれぞれミオグロビンとヘモグロビンが担っているが、節足動物や軟体動物の酸素貯蔵および運搬はHcが担っている。Hcはタイプ3銅含有タンパク質の一つであり、本研究で用いた節足動物のHcは同一のサブユニットが6個集まった6量体を構造ユニットとして、6量体構造ユニットが集まって超分子を形成する。各サブユニットは一対の二原子銅からなる活性部位を1つ有し、各々の活性部位に酸素1分子が結合する。Hcはヘモグロビンと同様、酸素分子脱着において協同効果を示すことが良く知られているが、pHによる酸素結合能の違い(ボーア効果)や協同効果に影響を与える因子の分子機構に関しては依然不明な点も多い。
本年度は3種類の節足動物由来Hcにおいて、pHによる活性部位構造変化が酸素親和性に及ぼす影響をフラッシュフォトリシス法とK吸収端のX線吸収分光法(XAS)を用いて調べた。フラッシュフォトリシス法の測定により、酸素親和性のボーア効果は酸素解離速度K_<off>よりも酸素結合速度k_<on>に由来することが示唆された。また、Hcの銅配位構造をpHの関数としてXASにより見積もった。既知構造のモデル化合物における銅配位構造とXASスペクトルの線幅との相関に基づいてHcの銅活性部位の構造変化を解析したところ、Hcの銅活性部位の配位構造はオキシ体では調べた全てのpHで変化しなかったのに対して、デオキシ体ではpHによって大きく変化した。X線吸収微細構造スペクトルの1s→4p_z遷移の強度変化から、デオキシHcの銅活性部位がpH依存的に擬四面体構造から三角形構造へ変化することが解かった。また、観測された構造変化はフラッシュフォトリシス法によるアルカリpHでの酸素親和性の向上とよく対応していた。これらの結果より、還元型Hcの酸素結合速度はCu(I)の配位構造に依存し、節足動物のボーア効果の構造的要因が示唆された。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Molecular Basis of the Bohr Effect in Arthropod Hemocyanin2008

    • 著者名/発表者名
      S. Hirota, T.
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry 283

      ページ: 31941-31948

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photocontrol of Spatial Orientation and DNA Cleavage Activity of Copper(II)-Bound Dipeptides Linked by an Azobenzene Derivative2008

    • 著者名/発表者名
      H. Prakash
    • 雑誌名

      Inorganic Chemistry 47

      ページ: 5045-5047

    • 査読あり
  • [学会発表] 節足動物由来ヘモシアニンの酸素結合挙動にpHおよび乳酸が及ぼす影響に関する研究2009

    • 著者名/発表者名
      田中直輝
    • 学会等名
      日本化学会第89春季年会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2009-03-27
  • [学会発表] レーザーフラッシュフォトリシス法による節足動物由来ヘモシアニンのアロステリック効果の研究2008

    • 著者名/発表者名
      田中直輝
    • 学会等名
      日本生物物理学会第46回年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2008-12-04
  • [学会発表] ヘモシアニンのアロステリック効果のレーザーフラッシュフォトリシス法による研究2008

    • 著者名/発表者名
      田中直輝
    • 学会等名
      第3回バイオ関連化学合同シンポジウム
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2008-09-20

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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