原始紅藻 Cyanidioshyzon merolaeから、高い活性の光化学系II(系II)複合体標品を高度に精製することができた。また、均質な二量体として得られていた。現在、結晶化条件を検討中である。これまでに、ラン色細菌に於いて3.0Aの分解能で系IIの結晶構造モデルが報告されており、その結晶構造モデルは、二量体である。しかし本研究では、単量体と二量体が環境条件により相互変換して機能調節を行ったり、あるいは系II複合体が強光下で障害を受け、その後の修復過程で単量体として存在している可能性を検討した。ところが、精製条件を検討してみると、環境条件よりも精製条件がその量比に影響を与えていることが判明した。精製の過程で系II複合体に結合している脂質を除く処理を行うと、より多くの脂質を除くと、単量体の割合が減少し、逆に二量体の割合が増加した。このことにより、生体中では単量体として存在する系II複合体が精製の過程で二量体化していることが示された。また、ラン色細菌、紅藻、珪藻、高等植物を材料にして、界面活性剤を含まない状態で光化学反応を測定することにより、単量体・二量体の存在状態を検証した。その結果、高等植物ではさらなる検討が必要であるが、他の生物種では系IIは単量体として存在することが示された。環境条件が変化により系II複合体は修復が必要な状態になるが、これまでの仮説ではそのような時には単量体になり、修復を受けて二量体化した上で機能を発揮するとされていた。本研究の成果により、そのような単量体化・二量体化は生体中では起こらないであろうと結論づけることができる。
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