一酸化窒素還元酵素(NOR)は脱窒過程の中で一酸化窒素を亜酸化窒素に還元する。また、この反応は嫌気呼吸による生体エネルギーの合成に共役していることから、一酸化窒素還元酵素は嫌気呼吸を支える重要な酵素の一つとなっている。好気(酸素)呼吸系でこの酵素に対応するのがシトクロムc酸化酵素であり、両者は進化的に関連が深いことがアミノ酸配列などから明らかにされている。これら呼吸酵素の機能発現の仕組みを解明する鍵を握るのは短寿命な気体分子・呼吸酵素複合体である。本研究ではNORと一酸化窒素や酸素との複合体を安定に捕捉し、振動分光法によって解析することで活性部位の構造を明らかとし、その機能発現のメカニズムを解明することを目的としている。低温で凍結させた酵素を高圧ガスに曝露し、強制的に気体分子を試料内部に浸透させ短寿命な気体分子一蛋白質複合体を調製するクライオガスサイターを平成18-19年度に開発した。本装置を活用し、振動分光解析を進めるためには通常のガス(14^NOや16^O_2)に加えて安定同位体ガス(15^NOや18^0_2)も利用して反応中間体を調製する必要がある。本年度はこのために圧力が低い状態で市販されている安定同位体を高圧に加圧する装置の開発を進めた。本装置を用いることで初めて計画している短寿命な気体分子・一酸化窒素還元酵素の複合体の振動分光解析を進めることが可能となる。本装置では高価な安定同位体ガスを効率よく回収し、複数回の実験に活用することが可能であり、研究資源を有効に利用できる。
|