研究概要 |
我々は、今までに、vRNAは化学療法剤の効果を抑える作用をもち、ガン細胞中でvRNAを大量発現させると化学療法剤に対する抵抗性(薬剤耐性)が増大することを示してきた。また、vRNAを過剰に発現するガン細胞株のスクリーニングを行い、化学療法剤に対する抵抗性について調べてきた。特に、U937,U2OS and U2OS^<mot+>細胞を用いた時に発現が高く、高い化学療法剤に対する抵抗性を示した。本年度は、RNAi法を用いて、標的vRNAの遺伝子発現を抑制(ノックダウン)する実験を行い、これによって化学療法剤に対する感受性、抵抗性についての評価を行った。RNA-1の配列から2つの領域のうちsite Iを選択し、RNAi法に用いるRNAiオリゴをデザインし、このRNAiを細胞内で発現するためにpSilencerベクター(pSilencer-Vaultl-4RNAi-1&2およびコントロールとしてのpSilencer-Vaultl-4RNAi-3c&4c)を構築した。このベクターを用いて細胞内にトランスフェクトするとU6プロモーターより特定のRNAiが発現する。また、このベクターはプロマイシン耐性を保持するため、トランスフェクトした後の細胞をプロマイシンプレート上で培養することにより適当な細胞を選択できる。また、vRNAの発現レベルはRT-PCR解析によって調べることができる。U937細胞株を用いた実験では、vRNAの発現はコントロールに比べ50%の阻害が、ヒト骨癌由来の培養細胞株(U2OS)を用いた実験では、85%の阻害を確認した。次に、U2OS^<mot+>を用いて実験した(U2OS^<mot+>は悪性のHsp70ファミリー蛋白質mortalinを発現し、mitoxantroneに対し高い抵抗性を示す)。この場合、70%の阻害を確認した。この阻害は、この細胞株が、約2倍量のvRNAを発現することと関連すると考えられる。また、mitoxantroneに対する抵抗性は、療法剤濃度の増加によって低下することも明らかになった。
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