RNAは細胞の状況やクロマチン構造によりその運命が変化するが、その分子機構は明らかではない。研究代表の村上は分裂酵母を用いてRNAi依存性ヘテロクロマチン形成の契機となるnon-coding RNAの転写にかかわる因子の同定解析をおこなっている。本年度は転写伸長に共役してRNAの運命決定やクロマチン構造制御に深く関わるRNAポリメラーゼIIのCTDリン酸化とヘテロクロマチン形成の関連を解析した。その結果CTDの2番目のセリンのリン酸化がヘテロクロマチン形成に必要で有ることが示された。また、転写の初期段階の慎重制御に関与するSpt4タンパク質(下記山口のDISFのサブユニット)が欠失するとヘテロクロマチンによる転写抑制が機能しなくなることも見いだした。これらの結果はヘテロクロマチンないでの転写伸長制御がダイナミックにヘテロクロマチン形成・転写抑制に関わるという新規のコンセプトを示唆している。研究分担者である山口は、第1に、転写伸長因子DSIFによる伸長活性化のメカニズムについて生化学的解析を行ない、DSIFが他の転写伸長因子Tat-SF1およびPaf1複合体と協調的に転写伸長を活性化することを明らかにした。第2に、DSIFがリン酸化依存的にRNA品質管理因子Dom3と結合することについて機能・構造解析を進めた。コロンビア大学のTong研究室と共同で、DSIFのリン酸化ペプチドとDom3の共結晶構造を解析した。第3に、3'プロセシング因子CFImの機能・構造解析を行ない、CFImが(25)2-59-68というヘテロ4量体を形成すること、そして細胞内において多数の遺伝子上で選択的ポリ(A)付加を制御するユニークな役割を果たしていることを明らかにした。
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