研究概要 |
DNA損傷によるヒストンR3-T11の脱リン酸化を介した細胞増殖関連遺伝子の発現抑制が、いかなる細胞表現を誘導するのかを明らかにする目的で、Cre/loxPシステムを用いたコンディショナルChk1欠失マウス繊維芽細胞を樹立した。この繊維芽細胞を用いて、Cre発現アデノウイルスを感染後にChk1遺伝子を欠失させ、H3-T11の脱リン酸化を誘導した後の細胞表現を解析した。Chk1を欠失した繊維芽細胞は、細胞増殖に必須なサイクリンB、サイクリンA、Cdk1、Cdk2分子の発現が著名に減少し、細胞周期のS期において恒久的に増殖を停止した。S期に停止した細胞では、リン酸化型Rbの消失、ヒストンH1分子の消失、HMGA1およびHMGA2分子の増加、p53の安定化とp21の発現上昇が認められ、細胞老化の表現型と類似の変化を示した。さらに、これらの細胞は老化に伴うガラクトシダーゼ活性染色(Senescence associated-beta galactosidase)陽性となり、Chk1欠失によるH3-T11の脱リン酸化は早期細胞老化を誘導していると考えられた, 興味深いことに、Chk1欠失による早期細胞老化は、パピローマウイルスE6およびE7を発現させてp53およびRbの機能を失活させても回避することはできなかった。これらの結果は、Chk1欠失によるH3-T11の脱リン酸化がもたらす早期細胞老化は機能的p53およびRbの下流で機能することが強く示唆された。
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