研究概要 |
遺伝子発現のエピジェネテイツク制御は細胞運命決定に不可欠である.ポリコーム群はその制御に関わる中心的因子である.一般的にポリコーム群は数百個のユークロマチン遺伝子を安定的に抑制すると考えられているが,その分子機構は未だ不明である.私はこの理解のために数種ポリコーム群-GFPノックインマウス作製(Mell8-GFP, RinglB-YFP, Phc2-Ceruleanなど)と各ノックイン由来胚性繊維芽細胞(MEF)の分子イメージング解析を行った.その結果として,ポリコーム群は核内に数百個の微小斑点状構造体(PCG body)を形成する,PcG bodyはユークロマチン領域のトリメチル化ヒストンH3K27-rich領域に優先的に存在する,そして,その存在位置はポリコーム群標的遺伝子座,少なくともInk4a-Arf,Hoxbクラスターに一致することがわかった.加えて, Hoxbクラスターを構成するb1とb9は約90kb離れているが,同一のPcG body内に収容されていることが示された.さらに興味深いことに,PcG body消失によって,b1とb9遺伝子座の空間的一致は乱れることが示された.また,この時,b1およびb9遺伝子の脱抑制が確認された.これはクロマチン構造と遺伝子発現が相関していることを示すものである.結論として, PcG bodyは標的遺伝子領域を凝集させることで遺伝子を不活化する機能ドメインである.これはポリコーム群抑制機構解明の端緒を開くものである.
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