研究課題
腋芽の伸長は、イネ科作物の分げつ数と関連ずる重要な農業形質である。また、通気組織は、イネが湿地で生育する上できわめて特異的な形質で他の作物への応用を考えると重要なイネの形質といえる。両形質の発現コントロールは環境に応答した遺伝子発現ネットワークの制御下にあると考えられているが、その分子的基礎は未解明である。当初、我々は腋芽伸長に必須なハーフサイズのABCタンパク質を発見し、タンパク質の1アミノ酸置換した変異体rcn1では、腋芽伸長が著しく抑制され、出穂時でも分げつが1本以下となることを報告した。また、rcn1では根の酸化力の低下を示唆する硫化鉄の沈着が著しかったことから、Rcn1の根の酸化力への影響を推定した。ただし、エアレーションした好気条件でも腋芽伸長が抑制されたことから両形質の発現の関連性は低いと考えられた。ハーフサイズのABCタンパク質がホモ二量体かヘテロ二量体で機能することを考慮すると、Rcn1の機能解明には二量体のパートナーの同定が必須となる。本年度は、相互作用するABCタンパク質候補を選定することを目的として、rcn1の腋芽でのABCタンパク遺伝子の発現を解析した。その結果、Rcn1のフィードバック制御下にある2種類のハーフサイズのABCタンパク質遺伝子を同定した。現在、Rcn1とこれら2種のABCタンパク質の相互作用の検討を進めている。また、本年度はrcn1と野生型の通気組織形成能を評価するための実験系を確立した。この実験系では嫌気ストレス処理後24時間で野生型では通気組織の形成が誘導されるが、rcn1では少なくとも処理後72時間まで通気組織が誘導されなかった。現在、実験系における種々の細胞内の変化の組織学的解明を進めている。
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New Pytologist 182
ページ: 91-101
http://www.obihiro.ac.jp/ichiran/kato_kiyoaki.html