【研究目的】 植物の生産性を著しく減少させる塩ストレスの主要因であるNa^+毒性の分子機構を明らかにするために植物体内のK^+/Na^+輸送系の理解が必須である。本研究は、主要作物のイネにおいて17種存在するHAK輸送体がK^+/Na^+輸送に果たしている役割を解明し、塩ストレス耐性の鍵となるHAK輸送体を同定することを目的とする。 【結果と考察】 1. HAKの発現解析 植物のK^+/Na^+恒常性が乱されるカリウム飢餓時または塩ストレス時に発現が誘導されるHAK輸送体として、K^+親和性が高いクラスターIに属するOsHAK1およびOsHAK5が見いだされた。 2. 耐塩性植物の分子育種に有用なOsHAK/OsHKT分子の同定 耐塩性植物の分子育種に有用なK^+高親和性の輸送体として、酵母のK^+/Na^+輸送体欠損株を宿主に用いた相補性試験により同定したOsHKT2 ; 1S88GおよびOsHKT2 ; 2に加え、大腸菌のK^+/Na^+輸送体欠損株を宿主に用いた相補性試験によりOsHAK5を同定した。 3. OsAK/OsHKTを過剰発現した形質転換植物の作製 OsHAK5を過剰発現したタバコ培養細胞を作製し、その塩ストレス耐性について解析した結果、OsHAK5により植物細胞の塩ストレス下でのK^+恒常性の維持能力が高まることで、植物細胞の耐塩性が向上することが明らかとなった。現在、植物体レベルでの影響を調べるため、選抜したOsHKT/OsHAK分子を過剰発現した形質転換イネの作製を進めている。
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