当初の計画のうちKAT1の結晶化およびX線結晶構造解析については、精製したKAT1の安定性が不十分であったこと等から、期間内に結晶化を達成することができなかった。結晶構造解析が困難になったことから、安定性の改良とCD測定法による二次構造解析に取り組むことにした。 昆虫細胞/バキュロウィルス発現系から界面活性剤で可溶化したKAT1について、添加リン脂質が安定性に与える影響を検討したところ、大豆由来の精製ボスファチジルコリンの添加がKAT1の凝集や分解を著しく抑制する効果を示した。大豆由来精製ホスファチジルコリンを添加した条件で精製を行った結果、当初1L培養当たり0.2mgであった収量を1L培養当たり約2mgまで増加させることができた。さらに精製で用いる界面活性剤の選択がKAT1の構造に与える影響について円二色性分光法を用いて検討した結果、DDMに置換した場合α構造を保持していることが示唆された。DDMの場合、FOS cholineやBrij-35に比べてKAT1に吸着するリン脂質の量が有意に高くなることから、吸着したリン脂質の保持がホスファチジルコリンによる安定性の維持に関与することが示唆された。精製したKAT1について平面脂質二分子膜を介した2水相間の電位差-電流の関係を調べて、単一チャネル電流の大きさ、持続時間、出現頻度などについて検討を行った。その結果、セシウムイオンによる阻害を確認することができた。
|