研究課題
視物質ロドプシンは網膜視細胞に存在する光受容膜蛋白質である。研究代表者らはスルメイカのロドプシンについてX線結晶構造解析を行い、昨年度までに基底状態の立体構造を2.5A分解能で決定し、無脊椎動物型ロドプシン活性化における分子内シグナル伝達に寄与すると考えられる特徴的な構造を見出した。今年度は光反応初期中間体であるバソロドプシンの結晶構造解析を目指し、結晶中でバソ反応中間体を捕捉し、X線回折実験に適した条件を検討した。液体窒素温度に冷却した結晶に対して青色光を照射すると、全トランス型レチナールを含むバソ反応中間体が捕捉される。通常安全といわれているX線量で基底状態とバソ中間体の回折データセットを連続して収集した場合、バソ中間体形成に伴う構造変化はレチナール近傍には見られず、GPCRの活性化および構造保持に寄与する残基がX線損傷を受けていることが確認された。一方、青色光照射によりバソ中間体、赤橙色光照射により11-cis型ロドプシン(および9-シス型レチナールを含むイソロドプシン)を可逆的に生成させ、それぞれの状態についてX線回折データを収集し、さらにX線損傷の影響を除去した結果、少ないX線量を照射した場合にのみ、2状態間で活性部位近傍の電子密度に有意な差が観察された。この差電子密度マップに基づきバソ中間体の構造モデルを構築した。構造比較の結果、バソ中間体形成に伴いレチナールがゆがんだ全トランス型へ構造変化し、近傍のアミノ酸残基の側鎖に微小な変位が生じることが明らかとなった。また、タコロドプシンについては、結晶化に適した簡便な精製方法を確立することができた。
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