研究課題
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、細胞外刺激を細胞内へ伝える多機能処理装置として働く。このGPCR装置は、(1)リガンド選択性素子、(2)G蛋白質(G)選択素子、(3)リガンド依存的G活性化素子、(4)リン酸化などによる機能修飾素子、さらには(5)細胞内局在化素子などを併せ持つ。しかしこれらのほとんどは未だその実体が不明である。本研究の目的は、プロスタノイド受容体を題材として、GPCR装置に内在するG蛋白質選択素子やG活性化素子を網羅的に探索し、その分子メカニズムを化学的・構造的・細胞生物学的に解き明かすことを目的として解析を行った。以下に20年度の成果を示す。(1) 発熱-EP3受容体視索前野EP3発現ニューロンの解析から、PGE2による発熱応答時には視索前野のGABA-A受容体蛋白の発現が低下すること、PGE2のこの作用はEP3受容体とGi/o蛋白を介することを見出し、PGE2による発熱作用は、GABAの脱抑制を介する可能性を示唆した。(2) 受精-EP2受容体EP2欠損卵丘細胞の解析から、EP2はケモカイン産生を抑制することで受精を促進することを見出した。またケモカインは卵丘マトリクス(ECM)を強化して排卵の際には卵を保護するが、受精時には精子による卵丘EC短分解を阻害することを発見した。この際、ケモカインはCCR1/CCR2を介して低分子量Gタンパク質を活性化し、卵丘細胞の細胞骨格を変化させ、これがインテグリン活性化ならびにECMコンパクションを引き起こすことを見出した。従って、PGE2はケモカインとともに卵丘ECMを動的に調節することで、受精を助長することが判った。
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