我々はこれまでに蛍光標識したGGTaseおよびFTaseの基質ペプチドを用いて細胞のFPPやGGPPがHMG-CoA還元酵素阻害薬処理後ダイナミックに変化することを示した。また、この方法を応用して内因性のGGTaseおよびFTaseの活性を測定し、Gタンパク質共役型受容体刺激がGGTaseやFTase(の活性化を増大させることを見出した。今回はその作用機構について検討した。血管内皮細胞において、リゾホスファチジン酸(LPA)やトロンビン、スフィンゴシン1リン酸(S1P)は、内因性のFTase活性を増大させた。この反応は細胞を百日咳毒素で処理すると抑制されることから、Giを介した反応であると考えられた。このFTaseの活性化はPI3キナーゼ阻害薬や、ERK阻害薬、p38MAPキナーゼ阻害薬では影響されなかったが、チロシンキナーゼ阻害薬のPP2により抑制された。また、βγサブユニットの機能を阻害するβARKのc末端をアデノウイルスにより発現させると抑制された。FTaseは、FTaseαとFTaseβのヘテロダイマーで機能的な酵素を構成する。HEK293細胞にFTaseαとFTaseβのcDNAを発現させると、FTase活性の増大が認められた。このリコンビナント酵素の活性調節も、内皮細胞で認められた制御機構と同様の性質を示した。このことから、イソプレニル転移酵素のうち少なくともFTaseの活性はG蛋白質のβγサブユニットの下流でチロシンリン酸化を介して制御されることが示唆された。
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