低分子量G蛋白質Rabファミリーは輸送小胞と標的膜とのヘテロティピックな膜融合や、均一な膜同士のホモティピックな膜融合に関与することが知られている。ヒトでは60種以上もの異なるRabが存在するため生理機能は不明なものが多い。本研究課題では、ヒトの約半数しかRab遺伝子をもたない線虫に着目し、Rab遺伝子および関連遺伝子変異体の網羅的作成と表現型解析によりRab蛋白質の生理機能に関する体系的知見を得ることを目的としている。本年度の成果は以下の通りである。1.Rabの活性化を阻害するRabGDI(GDP-dissociation inhibitor)遺伝子の欠失変異体をTMP/UV-PCR法で取得した。gdi-1変異体は致死となり、Rabの活性化が個体の発生・生存に必須であることが示された。2.線虫全Rab遺伝子の変異体38アリル(複数アリル取得した遺伝子も存在)について野生型線虫との戻し交配とバランサー株との交配により安定株を樹立した結果、全Rab変異体株の表現型は(A)ホモ接合体で生存維持可能、(B)不稔、(C)致死に分類された。これらの変異体と輸送経路やオルガネラを可視化するトランスジェニックラインとの交配を進めている。3RabはGEF(guanine nudeotide exchange factor)により活性化され、GAP(GTPase-activating protein)により不活性化されるが、各Rabを制御するGEFやGAPはほとんど同定されていない。線虫ゲノム上にはRabGAPドメインと考えられているTBC(rre2/Bub2/Cdc16)ドメインを持つ遺伝子がRab遺伝子よりも若干少ない数存在していた。Rab変異体とRabGAP変異体の表現型の対応付けを行うことにより各Rabを制御するRabGAPを同定するため、RabGAP欠失変異体の網羅的作成を進めている。
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