発生過程において、細胞は集団となってダイナミックに形を変え移動する。細胞の運動の時空間制御に、三量体G蛋白質(G蛋白質)を介したシグナル伝達は重要な役割を果たしている。G蛋白質のシグナルはレセプターによって活性化されるだけではなく、GPCRキナーゼ(GRK)によって巧妙に調節されている。しかし、GRKによるG蛋白質シグナルの調節が形態形成運動にどのような役割をもつのか、わかっていない。本研究は、ショウジョウバエの原腸陥入をモデルに、形態形成におけるG蛋白質シグナルの調節機構の役割を明らかにすることを目的とする。私は、GRKの1つであるGprk2が原腸陥入に必須であることを見いだした。Gprk2の分子機能を解析することによって、形態形成におけるG蛋白質シグナルの時空間制御機構を明らかにする。 Gprk2変異胚では、リガンドFogが制御するアピカル収縮の領域が広がっていた。FogとGprk2の2重変異がFog単独変異と同じ表現型を示すことから、Gprk2変異の表現型は異常なFogシグナルが原因であることが示された。シグナル伝達の時空間変化をライブイメージングから解析したところ、Gprk2変異ではシグナルの蓄積が細胞集団で不均一に進行することが示された。これらの結果から、Gprk2はFogシグナルを抑制しアピカル収縮の領域を規定するとともに、Fogシグナルの効率的な蓄積に寄与し、同調的で頑強なアピカル収縮を進行させることが示唆された. さらに、フランスのグループとの共同研究から、Fogの上流で働き原腸陥入に必須なGPCRを同定し、それがGprk2によってリン酸化されることを見いだした。今後、このGPCRとGprk2の関係をより詳細に解析することによって、Gprk2によるG蛋白質シグナルの調節機構の役割を明らかにする。
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