発生過程において、細胞は集団となってダイナミックに形を変え移動する。細胞運動の時空間制御に、三量体G蛋白質(G蛋白質)を介したシグナル伝達は重要な役割を果たしている。G蛋白質を介したシグナル伝逹はGPCRキナーゼ(GRK)などの多数の因子によって巧妙に調節されているが、シグナルの調節機構が形態形成運動にどのような役割をもつのか、わかっていない。本研究は、ショウジョウバエの原腸陥入をモデルに、形態形成におけるG蛋白質シグナルの調節機構の役割を明らかにすることを目的とする。私は、GRKの1つであるGprk2が原腸陥入に必須であることを見いだした。Gprk2の分子機能を解析することによって、形態形成におけるG蛋白質シグナルの調節機構を明らかにする。 Gprk2変異胚では、リガンドFogが制御するアピカル収縮の領域が広がっていた。FogとGprk2の2重変異がFog単独変異と同じ表現型を示すことから、Gprk2変異の表現型は異常なFogシグナルガ原因であることが示された。フランスのグループとの共同研究から、Fogのレセプターを同定し、Pogと名付けた。培養細胞を使った実験からGprk2はPogをリン酸化した。Gprk2のキナーゼ活性部位の1アミノ酸置換(K338R)は、Posをリン酸化する活性を失った。Gprk2変異胚における原腸陥入の異常は、野生型Gprk2によって救済されたが、(K338R)変異Gprk2によって救済されなかった。これらの結果は、Gprk2のキナーゼ活性が原腸陥入に必須であることを示すとともに、Gprk2によるPogのリン酸化がFogシグナルを調節し、細胞運動を時空間レベルで制御することが示唆された。今後、細胞運動におけるPogのリン酸化の影響を調べ、Gprk2の分子機能と役割の詳細を明らかにする。
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