研究概要 |
GTP結合蛋白質の多くは特定の膜マイクロドメインに局在することにより分子スイッチとして細胞内情報伝達の要として機能する。パルミトイル化脂質修飾は翻訳後脂質修飾の一つであり、三量体G蛋白質のGα(Gs, Gi, Gqなど)、低分子量G蛋白質(H/N-Rasなど)に見られ、これら分子の局在、機能を外界刺激依存性に制御している。これまでに、我々はパルミトイル化反応の責任酵素群をゲノムワイドに同定し(Fukata M, et.al, Neuron 2004)、本特定研究(平成18-19年度)においてGαをパルミトイル化する酵素DHHC3/7を同定した。本研究では1)DHHC3/7によるG蛋白質動態制御機構の解明、2)脱パルミトイル化酵素の同定により、Gサイクルにおける時間的・空間的制御機構をパルミトイル化修飾という観点から明らかにする。今年度の研究実績は以下のとおりである。 DHHC3/7によるパルミトイル化がGαの細胞内動態に与える影響を生細胞イメージングにて検討した。GFP融合型Gαを用いたFRAP法、FLIP法、ならびに紫外線により蛍光波長が変化する蛍光蛋白質Dendra2との融合型Gαを用いたphotoconversion(光変換)法を用いて細胞内Gα_qの動態を解析した。その結果、パルミトイル化を介したGα_qの細胞膜-ゴルジ装置間双方向性輸送という興味深い現象を発見した。細胞膜に存在するGα_qは脱パルミトイル化を受け細胞質に移行し、その後ゴルジ装置においてDHHC3/7により再パルミトイル化され小胞輸送により細胞膜に再び輸送されると考えられる(堤らMol. Cell. Biol., 2009)。現在、脱パルミトイル化酵素の精製、同定を試みている。このように今年度の研究計画は達成できたと考えている。
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