研究代表者らはクロモキネシンkid欠損マウスの解析を通し、マウスにおいては受精後に起こる第二減数分裂終期の雌前核形成と、初めの数回の卵割分裂終期、すなわち卵細胞質の影響を強く受ける分裂(=maternal division)はその後の体細胞分裂とは異なる制御下にあることを示唆する結果を得た。本研究はKid欠損の影響や染色体局在がmaternal divisionでのみ顕著に異なる理由の解明を通し、maternal divisionとその後の体細胞分裂との違いを明らかにすることを目的としている。 本年度は、核膜形成の各ステップを見分けるため、蛍光タンパク質タグを付加した核ラミナ構成分子、あるいは核膜孔構成因子を数種類作製し、そのうちの1つは核膜形成過程の初期段階をモニターするプローブとして使用できることを確認した。maternal divisionとして受精後の雌性前核形成期あるいは第1卵割分裂期のマウス初期魅を、比較対象として第3卵割以降の分裂期について、それらを用いたライブ観察を行い、染色体分配開始(分裂後期の開始)から核膜形成の開始および進行のタイミングの解析に着手した。その結果、特に雌性前核形成過程は他の分裂後期と比較して特徴的な核膜形成開始の遅延があることを示唆する結果が得られ、そのことがKid欠損胚における雌性前核の多核化の要因と成っていると考えられた。 また、蛍光タンパク質タグを付加して発現させた際、母性因子依存的分裂期とその後とで局在が異なる核膜局在因子を1つ見出した。
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