研究課題/領域番号 |
20055022
|
研究機関 | 愛知県がんセンター研究 |
研究代表者 |
後藤 英仁 愛知県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 室長 (20393126)
|
研究分担者 |
笠原 広介 愛知県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 研究員 (90455535)
|
キーワード | 分裂期 / Chk1 / サイクリン依存性キナーゼ1 / チェックポイント / 染色体分配 |
研究概要 |
以前、我々は、分裂期においてChk1のセリン286およびセリン301がサイクリン依存性キナーゼ1(Cdk1)によってリン酸化されることを報告した。今年度、分裂期における細胞内局在の変化の可能性について検討をするため、抗Chk1抗体を用いた細胞染色を行った。その結果、今回用いた3種類の抗体いずれにおいても、分裂前期に、Chk1が核から細胞質に移行している染色像が得られた。このChk1の核外移行は、分裂前期の進行とともに徐々に進行することが判明した。次に、この核外移行がリン酸化反応と関連があるかについて検討するため、セリン286/301をアラニンに置換したChk1変異体(S286A/S301A)またはChk1の野生型(WT)をテトラサイクリン依存性に発現する細胞を確立した。その結果、分裂前期細胞において、WTは細胞質および核に局在するにも関わらず、S286A/S301Aの局在はほとんど核内にしか認められなかった。また、細胞の分裂期への進行は、S286A/S301Aの誘導によって、著しく遅延することが判明した。これに対して、リン酸化反応を模倣する変異体(S286E/S301E)では、分裂前期細胞において発現蛋白質が細胞質に認められる傾向がWTより顕著となり、分裂期の進行もWTより促進することが判明した。さらに、キナーゼ活性を持たないS286A/S301A変異体(K38M/S286A/S301A)は、分裂前期においてS286A/S301Aと同様にほとんど核内にしか局在しないにもかかわらず、細胞の分裂期への進行は全く阻害されないことが判明した。以上の結果は、1)Cdk1がChk1のセリン286およびセリン301をリン酸化することでChk1を核から細胞質に移行させていること、2)このChk1の核外排出により細胞がより円滑に分裂期へ進行しやすくなっていることを示唆するものといえる。
|