研究概要 |
核を覆い包む内外二層の膜系(内外核膜)は、これを貫く核孔とともに、核信号伝達のための特殊な空間構造を形成している。その内、内側核膜(inner nucleic membrane : INM)は核質(nucleoplasm)に接しつつ、また核孔(nucleic pore : NP)は細胞質と核質を直接結ぶ形で、核へ向けての信号伝達を担っている。本研究は、INMに存在するイオンチャネルを同定することを目的とした。膵腺細胞からの核小胞体標本(核とそれを覆う核膜 : nuclear envelope : NE)を対象とし、それへのパッチクランプ法の適用を試みた。 膵腺細胞からの核包標本を作成し、以下のイオンチャネルを外側核膜において同定した : 1)200pS Maxi-Kchannel, 2)80pS Kchanllel, 3)30pS cation-challnel, 4)7pS Cl-channel, 5)300pS IP3R-channel(type3), 6)55pS cADPR or NAADP-dependent channel。いっぽう、KイオンとClイオンをチャネル不透過イオンに置き換えると標本が縮小することから、核小胞体構造の維持あるいは積極的な構造変換に果たすチャネルの役割が推定できる。NE標本に低張クエン酸ナトリウム液処理(20mM Na-citrate溶液中に40分)を行うと、一部のNE標本において、IP3(10μM)が有効となり、IP3-依存性Na電流が計測できる。低張クエン酸ナトリウム液処理により内側核膜が露出され、核側IP3受容体活性化を促したと考えられる。内側核膜にはそれ以外目立ったイオンチャネルを検出することはできなかった。
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