研究課題
平成21年度、受容体型チロシンキナーゼのDown regulation(機能発現低下)の秩序維持機構に関与しているCIN85(Cbl-interacting Protein of 85kDa)のノックアウト(KO)マウスの多動性の分子基盤について解析を行った。「多動」の原因としてドーパミン及びその受容体の動態秩序の変化が挙げられる。CIN85 KOマウスの線条体ドーパミン含量は野生型に比べて有意に高値であった。さらに線条体初代培養細胞においてドーパミン刺激後、膜表面に存在するドーパミン受容体は野生型由来で約25%、CIN85 KOマウスでは70%であった。このことはCIN85 KOマウスの線条体におけるドーパミン受容体はドーパミン刺激でエンドサイトーシスされにくいことを意味する。この機能発現低下の秩序維持機構の破綻がドーパミン刺激の過剰を招き「多動」を誘発している。具体的な分子動態として、CIN85-ダイナミン-エンドフィリン-PSD-95の膜タンパク質複合体によってドーパミン受容体がエンドサイトーシスされることが解った。CIN85の欠損はエンドフィリンの膜タンパク質複合体へのリクルートを抑える。その結果、ドーパミンシグナルの発現低下の秩序維持機構の破綻を招き多動が誘発される。これは受容体によるシグナル調節が受容体単一ではなく、受容体の機能発現に必須な膜タンパク質が、必要な時に必要な場所に、秩序正しくリクルートされることによってもたらされる事を示している点で意義ある成果と考えられる。さらに、CIN85とドーパミン受容体は神経細胞の樹状突起で共発現していることを免疫組織化学的手法にて明らかにした。
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