研究概要 |
学習や記憶などの脳の高次機能は、神経シナプスにおける情報伝達が適切に行われることで成り立っている。神経シナプスのアクティブゾーンを構成する骨格たんぱく質としてはCAST, ELKS, Bassoon, Piccolo, RIM1.Munc13-1などが知られている。一方で、神経終末へのカルシウムイオンの流入を制御するカルシウムチャネルも、アクティブゾーンにおいて重要な役割を担っている。すでにCASTおよびカルシウムチャネルがin vitroで複合体を形成していることを明らかにしている。本年度は、生体内における結合を明らかにする谷に沈降実験の検討を行った。HEK293細胞にカルシウムチャネルおよびCASTの全長を共発現させ、それぞれのタグの抗体で免疫沈降実験を行った。しかし、全長同士の結合は検出できなかった。一方、京都大学との共同研究で、CHO細胞に、CASTおよびカルシウムチルャネルを導入し、電気生理学的な解析を行ったところ、CASTが存在することで、電位の強度がさらに亢進することが明らかとなった。次年度以降は、チャネルとCASTの結合に関して、より詳細な生化学的データをとる予定である。 また、CASTノックアウトマウスにおいてカルシウムチャネルの局在を解析したところ、影響は見られなかった。ファミリーメンバーELSKのコンディショナルノックアウトを作成中であり、今後、CAST/ELKSのダブルノックアウトマウスを作製し、カルシウムチャネルの局在に対する影響を解析する予定である。
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