(1) マウスゲノムに存在する13種類のセプチン遺伝子のうち成熟脳特異的に発現するSept4に着目して遺伝子破壊を行い、網羅的行動解析によってSept4欠損マウスのドパミン神経伝達が減弱していることを見出した。Sept4を含むセプチン複合体がドパミン・トランスポーター(DAT/Slc6A3)やtSNAREを含むトランスポートソームの構成成分であることなどから、シナプス前スカフォールドとしてのセプチン系の新たな役割が示された。さらに、パーキンソン病においてSept4が減少することがドパミン神経伝達を低下させ、病態を加速させる可能性も示唆された。セプチン系の破綻が微小管による膜蛋白質の輸送障害をもたらすことも、複雑な病態の背景にあるかもしれない。 (2) マウス神経組織におけるセプチン分子の局在から機能に関する手がかりを得るため、免疫電子顕微鏡(immunogold法)連続切片像(70nm厚×20切片)からシナプスやグリア突起形状と金粒子の分布情報を抽出してコンピュータ上で3次元再構築した。これによりシナプス近傍やグリア突起における特定の細胞膜ドメインにおいてセプチンが集積する傾向が明らかになった。これら細胞膜直下のセプチン・クラスターの一部はGLAST/Slc1A3などの神経伝達物質輸送体やその他重要な膜蛋白質と共局在することから、DATでみられたようにトランスポートソームのスカフォールドを構成している可能性がある。また、一部は膜骨格として樹状突起棘(スパイン)やグリア突起形状の構造的支持に寄与する可能性がある。
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