研究概要 |
ポリグルタミン(PolyQ)病は、原因蛋白質内のPolyQ鎖の異常伸長により発症する遺伝性神経変性疾患の総称で、異常伸長PolyQ鎖を持つ変異蛋白質がミスフォールディングを生じ、細胞レベル・個体レベルで様々な機能異常を来たし、最終的に神経変性を引き起こすと考えられている。研究代表者らはPolyQ病における神経機能障害の分子メカニズムを解明することを目的として、ショウジョウバエモデルを用いた遺伝学的スクリーニングを行い、最近アミノ酸トランスポーターSLC7ファミリーであるSup1遺伝子を神経機能障害に関わる候補遺伝子として見出した。今年度はSup1のアミノ酸トランスポーターとしての機能を明らかにするために、Sup1とその活性に必須な複合体のパートナーであるh4F2hcもしくはrBATとを、アフリカツメガエルの卵母細胞あるいはCOS-7細胞に発現させ、様々な基質候補アミノ酸を培地中に添加して、細胞内取り込み量を測定した。その結果、 Ala/Leuなどの中性アミノ酸、塩基性アミノ酸のLysをいずれも輸送し、酸性アミノ酸は輸送しないことが明らかになった。さらに、中性アミノ酸輸送のNa+依存性は比較的少ないことから、Sup1の輸送活性の特徴はy^+Lよりもむしろb^<0,+>に近い活性であり、哺乳類SLC7A9遺伝子に相当すると考えられた。しかしながら、小さなAlaと大きなLeuの輸送活性には大きな差を認めないことから、b^<0,+>活性を持つSLC7A9遺伝子に近いながらも哺乳類のSLC7ファミリーとは機能的特性が必ずしも一致しない可能性も考慮する必要があると思われた。
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