研究概要 |
ABCトランスポーターの異常(発現・機能の低下または上昇, 異常な細胞内局在など)は種々の疾患の発症や抗癌剤耐性の要因となる. したがって, ABCトランスポーターの細胞内局在やその発現調節の分子基盤を理解することは, 細胞の恒常性維持の観点のみならず種々の病態発症機構の理解のためにも重要であるが, ABCトランスポーター分子複合体実体に関しては不明な点も多い. 本研究では, 疾患関連ABCトランスポーターであるCFTR, BCRPおよびABCG5/8の膜分子複合体の機能・局在調節機構を解明し, その破綻により発症することで知られる種々の病態との関連性を明らかにすることを目的とし, 種々の検討を実施した. 具体的には, 各種トランスポーターの正常型または変異体の翻訳後修飾機構および分解制御機構を, その相互作用する分子の観点から明らかにし, また, その変異体の発現がさまざまな遺伝子発現変化を引き起こすことで知られるCFTRに着目し, 変異型CFTR(ΔF508-CFTR)による炎症・アレルギー関連遺伝子TLR2及びNGF発現誘導機構に関与する分子について明らかにした. その結果, まず, 正常型BCRPの分解系に, ユビキチン化に関与する分子Rma1が重要であることを同定した. 次に, 正常型ABCG5およびABCG8の小胞体安定性が異なることを明らかにした. また, △F508-CFTR発現細胞において, CFTR-C末端認識抗体により認識される25kDaタンパク質が高発現することが明らかになった. さらに, △F508-CFTR発現細胞および△F508-CFTR発現マウスにおけるNGF発現量が高値であることが明らかになった.
|