研究概要 |
神経細胞は、樹状突起と軸索という、機能的・構造的に大きく異なった領域をもった極性細胞である。神経細胞における速い興奮性情報伝達は、樹状突起上の細胞膜に存在するAMPA型グルタミン酸受容体によって担われている。しかしどのようにしてAMPA受容体が樹状突起へ選択的に輸送されるのかについては十分分かっていない。私たちはこれまでに、アダプタータンパク質AP-4が樹状突起への極性輸送を制御することを発見した。AMPA型グルタミン酸受容体はその関連タンパク質TARPに結合し、TARPをAP-4が認識することにより軸索方向への輸送を阻害する。一方、軸索に誤輸送されたAMPA受容体は細胞表面に輸送されず、軸索内部においてオートファジーにより分解されることが判明した。そこで今年度は、軸索内部においてどのようにオートファジー経路が制御されているのかを検討した。グルタミン酸受容体が過剰に活性化されると、細胞内に流入したNaイオンなどを排出するためにポンプ活性が亢進し、その結果ATP濃度の低下とAMPK-mTOR経路を介したオートファジーの活性化が起きることを見いだした(J Neurosci,2009)。したがって、神経変性モデルマウスであるラーチャーにおける軸索内部でのオートファジーは、神経細胞死の原因ではなく、結果でありむしろ細胞死を防ぐ方向に働いていると考えられた。一方、軸索で形成されたオートファゴゾームはダイニンによって細胞体に逆行性輸送されることを見いだした(Autophagy,2009)。
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