骨髄ストローマの形成するヒアルロン酸細胞外マトリックスが幹細胞ニッチとして機能する分子機序を明らかにする目的で、ヒアルロン酸合成酵素(Has)遺伝子のコンディショナルノックアウト(cKO)マウスやコンディショナルトランスジェニック(cTg)マウスを用いて、インターフェロン誘導生にCre遺伝子組換え酵素を発現するMx-Creマウスと交配し、骨髄におけるヒアルロン酸産生の人為的な制御システムの確立を試みた。まだ、上記遺伝子改変マウス由来の骨髄ストローマ細胞と造血幹細胞を用いて、骨髄ストローマ細胞の形成するヒアルロン酸細胞外マトリックスが、幹細胞の未分化状態維持に働く機能について、細胞培養系により検証した。その結果、Has cKOあるいはcTgマウスの骨髄からストローマ細胞を単離・培養することに成功し、細胞周囲におけるヒアルロン酸マトリックスの形成や産生能、更にはHas遺伝子の発現を解析した。そして、これら遺伝子改変マウス由来の骨髄ストローマ細胞においてヒアルロン酸の産生制御が可能であることを明らかにした。また現在、対照の骨髄ストローマ細胞とHas遺伝子欠損あるいは強発現細胞との間で幹細胞のストローマ細胞に対する接着性や長期維持に対する作用を比較している。今後は、CD44やCXCR4欠損マウスから単離した幹細胞を用いて同様の解析を施行し、CD44やSDF-1/CXCR4基軸とヒアルロン酸との協調的、あるいは非依存的作用を検討する計画である。
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