これまでのケモカイン受容体CXCR4および神経ペプチド受容体GPR54に対するリガンドの開発研究を発展させることにより、両受容体およびその関連受容体の活性化・不活性化と細胞の遊走や接着に関わる細胞外環境との関連について検討を行った。 [ケモカイン受容体リガンドの創製と応用]FC131誘導体の蛍光誘導体の創製研究を行った。種々誘導体を合成したものの、FC131との比較において大幅な受容体結合阻害活性の低下が認められたことから、さらなる構造活性相関研究を引き続き展開する予定である。一方、T140誘導体のPETプローブの創製研究を行い、コールド体の構造活性相関研究により、PET標識可能な部位を特定した。また、リガンド-受容体相互作用や受容体間の相互作用と細胞外環境との関連を明らかにするための評価系の構築を行った。細胞外ドメインにタグ配列を有する受容体を発現する細胞株、細胞内ドメインに蛍光タンパク質を融合した受容体を発現する細胞株をそれぞれ構築した。これらの活用により、すでに得られているT140の蛍光標識誘導体、および、蛍光標識SDF-1の利用によりCXCR4受容体に対する内在化の検討を行い、両プローブの活用により受容体の動態解析が可能であることを示した。 [GPR54受容体リガンドの創製と応用]GPR54受容体の選択的アンタゴニストの創製を目指して、GPR54アゴニストTOM80の開発プロセスにおける構造活性相関研究により蓄積した情報をもとに、TOM80の低分子誘導体への骨格変換を行った。TOM80のC末端側を残し、N末端を種々アシル基で修飾した各種誘導体について評価を行ったものの、いずれも受容体結合活性が失われ、さらなる検討が必要であることが示唆された。
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