研究概要 |
マウス始原生殖細胞(Primordial germ cells, PGC)の形成過程において、その前駆細胞集団で発現するIfitm1及びIfitm3遺伝子に着目して、その生殖細胞への運命決定を誘導する細胞環境の解析を進めている。我々の構築した培養マウス胚でのsiRNAによるノックダウン実験系、及び近年報告されたIfitm3ノックアウトマウスの解析からも(Lange, et. al., Mol. Cell Biol., 2008)、Ifitm3は、PGCの形成に必須な働きは果たしていないと考えられる。Ifitm 1は、siRNAによるノックダウン実験及び、shRNAを用いたノックダウンES細胞のキメラ解析から、それらの胚ではPGCは形成されるが、その後、内胚葉組織へと移動せずに中胚葉組織内に留まっていた事から、Ifitm1もPGCの形成に必須ではないと考えられる。一方、原始外胚葉を培養下においてIfitm 1或はIfitm3を単独で強制発現させた場合、PGC前駆細胞マーカーであるPrdm1の発現に影響は与えなかったが、Ifitm1とIfitm3を共に強制発現させると、Prdm1の発現誘導が観察された。興味深いことに、Ifitm1の強制発現によるPGCの局在に対する影響は、Ifitm3との共発現により打ち消される。このことから、標的細胞内とその周囲の細胞とでのIfitmファミリー遺伝子群の発現の組み合わせがその機能に重要であると考えられる。また、Ifitm3とIfitm1は、それぞれBmp及びWntシグナルの下流遺伝子と報告されている。Bmpシグナルは、PGC形成に関与することが報告されているが、Wntシグナルについては、我々はPGC形成に重要な働きを果たしている事を見いだした。今後Ifitmファミリーの発現を指標としてこれらのシグナルとPGC形成との関連が明らかにできると考えられる。
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