研究概要 |
本研究ではヘパラン硫酸の細胞外環境シグナル調節分子としての機能に着目し、その血管内皮細胞における機能解明を目的とする。具体的には、ヘパラン硫酸伸長酵素EXT1-floxマウス(Science 302 : 1044-1046, 2003)を、血管内皮細胞全般にCreリコンビナーゼを発現するTie2-Creマウス、および我々が独自に樹立したリンパ節高内皮細静脈(HEV)特異的にCreリコンビナーゼを発現するGlcNAc6ST-2-Creマウスと掛け合わせ、血管内皮細胞全般またはHEV特異的にヘパラン硫酸を欠損する変異マウスを作製し、血管増殖因子やケモカインなどの細胞外シグナル分子の機能に変化が見られるようになるか否かを解析する。本年度は、米国The Burnham Institute山口祐博士の研究室で樹立されたヘパラン硫酸伸長酵素遺伝子(EXT1)がloxPサイトで挟まれたEXT1-floxマウス(science 302 : 1044-1046, 2003)と、Creリコンビナーゼを血管内皮細胞特異的に発現するTie2-Creトランスジェニックマウスを掛け合わせ、血管内皮細胞特異的にヘパラン硫酸を欠損する変異マウスを作製した。この変異マウスは胎生11.5日目以降に致死となり、血管密度の減少および血管枝分かれ構造の異常が認められることを見いだした。今後、血管内皮細胞マーカーである抗CD31抗体を用いた胎児のwhole mount免疫染色および、組織染色により検討を行う予定である。また、マウスの肺より血管内皮マーカーであるCD31に対する抗体を用いてMACS(magnetic activated cellsorter)により血管内皮細胞を精製する方法を確立した。今後は、EXT1の発現を抑制するsiRNAの導入を行った後に、in vitroにおけるVEGF、bFGFなどの増殖因子に対する応答を、siRNAの導入を行わない対照の血管内皮細胞と比較解析するとともに、ウエスタンブロット解析によりこれらの増殖因子シグナルの結果引き起こされるMAPキナーゼERK1およびERK2のリン酸化を検討する予定である。
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