私達は、ショウジョウバエ腹部に位置する体性感覚ニューロンの樹状突起が、ハエ成虫が羽化してから24時間以内に、放射状からラダー状へと劇的にリモデリングすることを見出した。羽化後24時間は、ハエ成虫が、温度・匂い・機械刺激など様々な外界情報を受容し始める時期であり、感覚ニューロンにおいて感覚刺激依存的な神経活動(sensory-evoked neural activity)が急激に上昇する時期と合致する。続いて、この樹状突起リモデリングに異常をもつ変異体のスクリーニングを行い、細胞外マトリックス・メタロプロテアーゼMmp-2の機能変異体ではリモデリングが著しく抑制されることを発見した。更に体細胞クローナル解析を行い、Mmp-2は上皮組織から一過的に分泌されることを明らかにした。一方で、樹状突起のリモデリング過程をタイムラプス観察できるシステムを確立し、リモデリングは「既存突起の側方移動」と「新たな突起のDV軸方向への伸長」という2ステップにより構築されることを見出した。さらに網羅的RNAiスクリーニングにより、後者のステップには、Mmp-2により分解されなかった基底膜と、突起上のインテグリンとの相互作用が重要である可能性を見出した。現在、遺伝学的手法およびライブイメージングを駆使して、上記の細胞メカニズムを制御する分子メカニズムを明らかにしようとしている。
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