研究概要 |
本研究では、細胞増殖や分化に係る細胞内シグナル伝達に中心的な役割を果たす蛋白質リン酸化に焦点をあて、蛋白質リン酸化酵素の基質の同定を効率的に行い、シグナルネットワークの全体像を理解することを目的としている。 このために、蛋白質リン酸化酵素の触媒領域を用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィー法とショットガンLC-MS/MS解析を組み合わせた方法で相互作用分子の網羅的解析を行い、基質分子のスクリーニングを行った。本年は、細胞質分裂制御に関与するRho-kinaseの触媒領域に対してラット脳ライセートを出発材料として用いて解析を行った。また、蛋白質リン酸化酵素の特異性を確認する目的でProtein kinase N(PKN)についても併せて解析を行った。各カラムより相互作用分子を塩で溶出し、電気泳動後、銀染色により検出したところ、Rho-kinaseのカラムから多数のバンドが認められた。PKNのカラムからも多数のバンドが認められたが、そのパターンはRho-kinaseとは異なっていた。これら画分をLC-MS/MS解析に供し、相互作用分子の同定を行ったところ200以上の分子を同定することが出来た。同定されたRho-kinaseの相互作用分子の中には、これまでに報告のある既知の基質分子が複数含まれていた。このことから、本法により相互作用分子として基質分子を得ることが可能であることが示された。さらに、新たに得られた相互作用分子の幾つかについてin vitroでRho-kinaseによりリン酸化を受けるかを調べたところ、AP180, Doublcortin, Akmyloid precursor proteinがリン酸化されることを見出した。したがって、本法を用いて新規基質分子の濃縮・スクリーニングが可能になると期待される。
|