雄性生殖細胞は誕生後に分裂休止状態から分裂を再開させて増殖する。しかし、XX型とXY型の細胞が入り混じった雌雄キメラマウスの解析によると、XY型雄性生殖細胞は増殖して精子にまで分化するのに対し、まったく同じ環境下で存在するXX型雄性生殖細胞は分裂を再開せずに消滅してしまうことが分かった。これらの結果より細胞外シグナルは正常であるが、細胞内で起こる不都合を何らかのメカニズムでモニターするようなチェック・ポイント機構が存在すると考えられた。そこで、この分子制御を明らかにするには、XX型雄性生殖細胞が有効なツールになると考え、平成20年度はXX型とXY型雄性生殖細胞の比較解析を行った。これまでにBrdUの投与実験により、XX型雄性生殖細胞ではBrdUの取り込みが見られず、G1/G0期からS期への進行しないことが分かっている。そこで、雄性生殖細胞のG1期からS期への細胞周期の進行に重要と考えられているG1サイクリンの有無について、免疫組織学的染色によって調べた。その結果、誕生後にXX型とXY型雄性生殖細胞の間で細胞内局在に違いが見られるG1サイクリンを見出した。また、この細胞内局在に違いのみられたG1サイクリンはmRNAレベルではXX型とXY型雄性生殖細胞の間に大きな発現差はなく、タンパク質レベルでの細胞内局在の調整が細胞周期の進行に関与していることが示唆された。また、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現の違いを調べたところ、発現差のある遺伝子の上位に細胞周期の進行を抑制するCDKインヒビターがヒットした。次年度は雄性生殖細胞における、これらの分子の相関性について、詳細に検討したいと考えている。
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