研究概要 |
ほとんどの真核細胞はただ一つの核が存在するが,特定の細胞種には、積極的な二核状態の形成と維持が認められ、それは広範な生物群にわたって見出すことができる。それを可能にする仕組として、通常の体細胞分裂の際に続けて起きる核分裂と細胞質分裂が、その連動性を失うために生じることが想定される。本研究では、核分裂と細胞質分裂の運動性の放棄がいかなる細胞周期の制御によってもたらされるのかを、ショウジョウバエ附属腺における二核細胞集団をモデルとした実験系を用いて解明することを目指し、以下のような実験を計画し、行った。 1. 細胞周期に依存した細胞質分裂制御因子Rhoの活性を上昇させることにより、二核化形成を人為的にスキップさせることに成功した。これにより、附属腺における細胞質分裂の非共役は、核分裂後に中央紡錘体周辺でRhoの活性化が起きないことによることが明らかとなった。 2. ショウジョウバエ・ゲノムの8割をカバーする、各種の染色体欠失異体のコレクションを順次検索し、二核形成不全をみせる細胞(一核化している細胞)の頻度が上がる系統を複数同定した。これにより、附属腺における細胞質分裂停止を制御する遺伝子の同定に迫れることが期待される。 3. 細胞種特異的な二核形成不全をみせるトランスポゾン・タギング変異体"monos"の遺伝子座マッピングを進めた。これにより、附属腺における細胞質分裂を細胞種特異的に制御する遺伝子の同定に迫れることが期待される。
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