我々は、生体内におけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)インヒビターp21の機能を明らかにするために、p21遺伝子プロモーターの調節下でホタルの発光酵素(ルシフェラーゼ)を発現するトランスジェニックマウス(p21-p-luc マウス)を作製し生体内におけるp21遺伝子の発現をリアルタイムにイメージングできるシステムを開発した。本研究ではこのシステムを用いて、様々な病態において生体内におけるp21の発現部位やその発現動態を明らかにし、さらに分子・細胞・組織学的解析を行うことによりその病態における未だ知られざるp21の生体内機能を解明することを目的としている。近年、メタボリックシンドロームにおける分子生物学的解析が進んでいるが、メタボリックシンドロームの組織においては、酸化的ストレスなど様々なダメージが加わることが示唆されている。そこで、我々はメタボリックシンドロームにおけるp21遺伝子の関与を調べるため、p21-p-luc マウスに高脂肪食を摂取させた。その結果、肝臓において明らかな発光の上昇が認められ、内在性p21遺伝子の発現も上昇していた。次に野生型マウスとp21ノックアウトマウスに高脂肪食を摂取させたところ、p21ノックアウトマウスにおいては野生型マウスに比べて肉眼的および組織学的に明らかに脂肪肝形成が抑制されていることを見出した。最近、脂肪肝形成には小胞体ストレスが関与していることが知られている。そこで、ツニカマイシンをp21-p-luc マウスに投与し、小胞体ストレスを与え、経時的にイメージングを行ったところ、48時間後付近で腎臓において、また96時間後付近で肝臓において、p21遺伝子発現を示す発光の増強が認められた。これらの結果をふまえて、来年度は脂肪肝形成に関するp21遺伝子の役割・機能について、小胞体ストレスとの関連を含めて分子メカニズムを明らかにしたい。
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