ほ乳動物細胞において、染色体複製のライセンス化因子Cdt1は、再複製を抑制するためS期開始以降はユビキチン化を受け分解される。一方、我々は、Cdt1はM期中期に安定に存在することを見出した。この安定化は、次の細胞周期のためのライセンス化がM期終期からG1期初期に素早く確立するために重要であると考えている。M期では、Cdt1は高度にリン酸化されており、Cdt1のM期における安定化に関わると考え解析を行なった。 Cdt1-FLAGを安定に発現するHeLa細胞を同調して、M期とS期よりCdt1タンパク質を精製した。質量分析によりリン酸化部位の決定を行ない、M期に特異的に見られる、あるいはS期に比べてM期に顕著にリン酸化が起こっていると思われる部位をCdt1タンパク質全体にわたって検出した。しかしながら、ユビキチンリガーゼSCF-SKp2の認識に必要な29番目のT(スレオニン)および31番目のS(セリン)のリン酸化は検出されなかった。また、M期においてサイクリンA-cdkとCdt1の結合が低下していることを考え合わせ、サイクリンA-cdkの結合部位(Cy部位)近傍のリン酸化が、安定化に関与していると予想した。そこで、Cy部位近傍で検出された4カ所のTあるいはSをアラニン(A)に変異させ安定化を調べた。また、リン酸化部位の配列から、Plk1によるリン酸化が予想された。そこで、リン酸化部位のアラニン変異とsiRNAによるPlk1のサイレンシングを組み合わせて解析を行なったところ、Cdt1のM期安定化の低下が見られた。よって、いくつかのキナーゼによるリン酸化が、Cdt1の安定化に関わると結論した。
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