研究課題
発生期大脳皮質の神経前駆細胞は、他の細胞と同様にサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性依存的に細胞周期を進行しているが、神経分化に伴い細胞周期から脱出し、その多くてま多極性移動細胞となる。この際、CDK阻害タンパク質p27(kip1)が重要な役割を果たすことが知られている。我々は、一般的なCDKとは異なり分化後の神経細胞のみで活性を持つCdk5がp27(kip1)の安定化を介してアクチン細胞骨格の動態を調節することにより、多極性移動細胞の移動と形態変化を制御していることを見いだし、細胞周期関連タンパク質が最終分裂後の神経細胞において細胞周期とは別の機能を持つ可能性を示唆した。多極性移動細胞の移動速度は非常に遅く、大脳皮質形成における神経細胞移動の大部分はロコモーション移動と呼ばれる移動様式であることから、本研究ではロコモーション移動における細胞周期関連タンパク質の役割に着目した。従来の実験糸ではロコモーション移動の分子機構を直接解析することは困難であったことから、我々は簡便に個体への遺伝子導入を行える「子宮内エレクトロポレーション法」を用いてロコモーション細胞を可視化した大脳皮質をスライス組織にしてタイムラプス顕微鏡下で培養し、これに様々なキナーゼに対する阻害剤を添加してその影響を調べるという新たな阻害剤スクリーニング系を確立した(投稿中)。この実験系を用いることにより、まずCdk5を含むいくつかのキナーゼがロコモーション移動に必要であることを明らかにした。ロコモーション移動細胞は先導突乱という太い1本の突起を進行方向へ伸ばし、その根元に特殊な膨らみを形成し、その中に核が入り込む、という他の細胞ではみられない移動様式を行っていたが、Cdk5の活性を阻害することにより、先導突起の形態が異常となることが分かった。
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http://web.sc.itc.keio.ac.jp/anatomy/kawauchi/index_j.html