本研究では、C型肝炎ウイルス(HCV)コアタンパク質による小胞体ストレス誘導機構の解析を行った。HCVコアタンパク質はマウス肝臓やヒト肝細胞に発現させると小胞体ストレス応答(UPR)を誘導したり、脂質代謝異常を誘導することから、HCVの病態に深く寄与すると考えられているがその分子機構は未解明である。そこで、本研究者らはモデル真核生物として出芽酵母細胞を用いHCVコアの発現が小胞体ストレス応答(UPR)機構の解析を行った。HCVコアは酵母細胞に発現した場合も細胞質および小胞体表面に分布しUPRを誘導する。小胞体外のタンパク質がなぜ小胞体内腔タンパク質の蓄積などにより誘導されるUPRを誘導するのか?この疑問を解明するために、まずコア発現細胞内のカルボキシペプチダーゼ(CPY)の輸送様式を観察した。CPYは小胞体内に合成・プロセスされた後に、小胞輸送によりゴルジ体を介して液胞に輸送されるので、これらのオルガネラ間の輸送を追跡することが可能である。その結果、HCVコアがCPYの小胞体-ゴルジ間の輸送(COPII輸送)を阻害することが判明した。次に、小胞体内で正確な立体構造がとれずに小胞体関連分解(ERAD)により分解処理されるCPY変異体(CPY)を用いて解析した結果、コアの発現はCPY*の分解速度を低下させることが明らかとなった。これらの結果は、コアは小胞体の細胞質側に表面に分布・作用することで、小胞体表面で起こるCOPII小胞輸送の開始やERADの過程で起こる小胞体内腔から細胞質への逆向性輸送を阻害し小胞体内腔のタンパク質蓄積につなげる可能性が示唆された。
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