本研究の目的は、異常タンパク質生成に伴う細胞内ストレス発生とこれを管理抑制するシステムの解明である。突然変異ゼブラフィッシュの活用を特徴とする。これまでの研究により、小胞体ストレスを自然発症する突然変異ゼブラフィッシュ系統の単離と、その責任遺伝子が糖代謝酵素Pmm2であることを同定することに成功した。Pmm2はヒト先天性糖鎖異常症CDGlaの原因遺伝子であり、本系統は病態モデルとして有効となる可能性が高い。 本年度は、このPmm2変異ゼブラフィッシュの病態解析を詳細に行うことと、その病態回復を可能とする薬物処理の探索を行った。その結果、次の3点が明らかになった。 1 肝臓の病理解析の結果、Pmm2変異系統の肝細胞において、脂肪滴とリソソーム残渣の増加が観察された。前者に関しては、小胞体ストレスに応答した脂肪合成や蓄積増加によることが、また、後者に関しては、異常糖タンパク質の蓄積によることが予想された。 2 糖タンパク質の生化学的な解析を行ったところ、Pmm2変異系統では、Nグリコシル化された糖タンパク質が野性型より少ないことと、野性型には存在しない糖鎖をもつタンパク質が存在することがわかった。このことは、本系統が、CDGla患者と同様に、Nグリコシル化のない系統ではなく、減弱している系統であることがわかった。 3 病態の少なくとも一部は小胞体ストレスに起因すると予想し、ケミカルシャペロンによる病態回復を試みた。残念ながら、既存のケミカルシャペロンは毒性が高く、むしろ病態を悪化させるに留まった。
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