研究概要 |
分泌タンパク質(膜タンパク質)の小胞体膜内腔への移行は、(1)mRNAが小胞体膜上のリボソームで翻訳されながらトランスロコンを通過するシグナル認識粒子(signal recognition particle : SRP)依存的翻訳時輸送(Cotranslational translocation)と、(2)mRNAが細胞質の遊離型リボソームにおいて翻訳された後、トランスロコンを通過するSRP非依存的翻訳後輸送(Posttranslational translocation)の系がある。これら2つの輸送系の使い分けは、分泌タンパク質のシグナルペプチド配列の疎水性度の違いによって決められるというモデルが提唱されているが、その選別機構については未だ不明な点が多く、研究がほとんど進んでいない。本研究では、膜タンパク質の社会の秩序維持、品質管理の最初の段階である、膜タンパク質をコードするmRNAの翻訳の時間的・空間的制御機構、SRP依存的翻訳時輸送とSRP非依存的翻訳後輸送の選別機構を解析し、RNA結合タンパク質Khd1による膜タンパク質の品質管理機構を解明することを目的として研究を進めた。本年度は、Khd1のターゲットmRNAとして同定した膜タンパク質をコードするmRNA群(MID2,MTL1,WSC2)に着目して解析をすすめ、以下の結果を得た。 (1)Khd1がSRPのサブユニットの一つSec65と結合する。 (2)khd1変異により低下したMTL1 mRNAの安定性はsec65-1変異によって回復する。 (3)khd1変異とccr4変異はsynthetic growth defect(合成増殖遅延)を示す。 (4)khd1 ccr4二重変異株では細胞壁合成が異常になっていた。 以上の結果から、Khd1とSRPサブユニットにより、mRNAの安定性制御と膜輸送が関連すること、Khd1による制御は細胞壁合成に関わる膜タンパク質の発現制御に関わること示唆された。
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