研究概要 |
卵母細胞は第一減数分裂の進行に伴い, 分化, 成熟し, その後, 精子と受精する. 受精後, 役割を果たした減数分裂期のタンパク質は選択的に分解され, 胚発生に向けた細胞内環境のダイナミックなリモデリングが起きることが知られている. 申請者らはこれまでの研究からC. elegansの生殖腺において働くカベオリン (CAV-1) が受精後に細胞膜に輸送された後に同調的に細胞内に取り込まれ, 分解されることを明らかにしている. そこで本年度はまず卵母細胞の細胞膜において働くその他の膜タンパク質であるキチン合成酵素や卵黄の取り込みに働く卵黄レセプターについて蛍光タンパク質を融合し, これらの受精前後における細胞内動態についてin vivo解析を行った. その結果, これらの膜タンパク質も受精後に同調的に分解されることが明らかとなった. しかしながら一方で, 細胞内小胞輸送に働くシナプトブレビンやシンタキシンは受精後も細胞膜に残留し分解されないことから, 受精後に起きる膜タンパク質の分解には明確な選択性があることが判明した. これまでにも卵母細胞の減数分裂に働く細胞質タンパク質が受精後に選択的に分解されることが知られていたが, 膜タンパク質の選択的分解の例はほとんど知られていない. さらに, このプロセスには低分子量GTPase RAB-5などのエンドサイトーシス関連因子が関与し, 受精後におきる減数分裂期の進行が重要であることが明らかとなった. これらの結果から, 受精が完了すると減数分裂期に働く細胞質タンパク質だけでなく一群の膜タンパク質も選択的な輸送方向の制御と分解により再編成されることが明らかとなった. さらに, 目的遺伝子をノックダウンできるRNAi法を用いた逆遺伝学的アプローチと受精卵におけるCAV-1-GFPの動態に異常を示す変異株の分離と解析によって, 受精後の選択的分解に関与する複数の候補因子の同定に成功しており, 現在解析を進めている.
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