ミトコンドリアは2重膜構造により形成された、細菌の共生を起源とするオルガネラである。ミトコンドリアの蛋白質は核ゲノム及びミトコンドリアゲノムの両方にコードされており、それらが正しく輸送され複合体を形成してはじめて機能を発揮することができる。また近年ミトコンドリアの融合・分裂を含むダイナミックな形態制御が細胞機能制御に重要な機能を持っていることが明らかになりつつある。しかしミトコンドリア融合・分裂に機能する分子の機能詳細は、特に哺乳動物細胞においてまだ充分な解析がなされていない。 ミトコンドリア分裂に機能するダイナミン様GTPase、Drp1は細胞質に局在しているが、ミトコンドリア分裂点に局在化してミトコンドリア分裂を促進する。一方、ミトコンドリア外膜の内在性膜蛋白質であるFis1もミトコンドリア分裂に機能することが知られていたが、その働きはほとんど解析されていなかった。本申請者らはFis1と結合する分子として新たなミトコンドリア形態制御因子を同定した。この蛋白質は膜結合ドメインを持っておらず、外来的な発現により細胞質に分散したパターンを示すことから、通常は主に細胞質に局在すると考えられる。しかしFis1と同時に発現することによりミトコンドリアと一致した分布を示すようになった。さらに、この蛋白質の発現をRNAiにより抑制すると、ミトコンドリアの形態に大きな変化が観察された。これらの結果から、Fis1はこれまでに知られていなかった新規ミトコンドリア形態制御因子のミトコンドリアへの局在化に機能していることが明らかになった。現在これらの分子の機能詳細についてさらなる解析を行っている。
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