研究概要 |
sHspは生物界に普遍的に存在する分子シャペロンで、変性タンパク質の不可逆的凝集を抑制する機能をもつ。通常の温度条件下では分子量12〜43kDaのサブユニットが大きなオリゴマーを形成しており、熱によってその構造が可逆的に解離する。解離したsHspは変性タンパク質と結合し、基質を含んだ巨大な可溶性複合体を形成することで、変性タンパク質の凝集を防ぐと考えられている。分裂酵母Schizosaccharomyces pombe由来sHspであるSpHsp 16.0について、相互作用する細胞内在タンパク質を同定することを目的に実験を行った。野生株のライセートにSpHsp16.0-FLAGを添加し熱ストレスを加え、SpHsp16.0-FLAG-基質複合体を免疫沈降により分離した。SDS-PAGEにて確認された各バンドをLC/MS/MSで解析した結果、34種のタンパク質が同定された。さらにこれらは熱ストレスを加えることでSEC-HPLCの溶出位置がシフトし、SpHsp16.0-基質複合体と同様の高分子量を示すことが明らかとなった。これらのタンパク質には-見して共通した機能・構造がみられないことから、sHspは基質特異性をもたず、細胞内において様々なタンパク質を熱ストレスから保護することが示唆された。好酸好熱性古細菌Sulfolobus tokodaii strain 7由来StHsp14.0のC末端IXI/Vモチーフ(IKI)をFKF, FKI, IKF, WKWに変異させた変異体を作製し、温度依存的な解離とシャペロン機能を解析した。各変異体は、野生型に比べ低温(FKI, IKF, WKWは50℃、FKFは25℃)で解離した。いずれの変異体も、解離温度以上で基質の凝集を抑制した。凝集抑制活性はFKFよりもFKI, IKF, WKWの方が高かった。そこで、CSとの複合体の分子量をX線小角散乱による原点散乱強度から算出した。WKWはCS1分子に対し24分子が結合し凝集を抑制している事が明らかとなった。FKFも完全にダイマーに解離した状態からCSと複合体を形成していく様子を観察する事ができたが、WKW-CS複合体より小さかった。これは、FKFがIXI/Vモチーフを介したダイマー間相互作用が弱い為と考えられ、StHsp14.0の効率的な凝集抑制には、この相互作用が重要である事を示唆している。
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