小胞体(ER)で新規に合成されたタンパク質は、立体構造形成後に輸送小胞に乗り込んでゴルジ体へと輸送されるが、構造形成に失敗したものはサイトゾルへと輸送され、ユビキチン-プロテアソーム系で分解される(ERAD)。クオリティコントロール(QC)コンパートメントは、プロテアソーム阻害剤を加えた時に、核近傍に形成されるERサブドメインとして見いだされ、そこにはポリユビキチン化されたERAD基質が蓄積している。我々は最近、Bap31(B cell-associated protein of 31 kDa)がQCコンパートメントの成分であることを見いだし、Bap31が核近傍と細胞周辺部を微小管に依存して循環していることを明らかにした。本研究ではBap31のER内循環機構とQCコンパートメントのERADへの関与を調べた。 1) Bap31のER内循環機構 Bap31は膜を3回貫通するタンパク質であるが、第2の膜貫通領域が核近傍から周辺部へ、第3の膜貫通領域が周辺部から核近傍への移動に関与していることが予備実験から判明している。一アミノ酸置換変異体を作製して調べたところ、第2膜貫通領域のGly-48、Thr-50、Val-54が核近傍から周辺部への輸送に関与していることが判明した。一方、周辺部から核近傍への輸送には複数のアミノ酸が寄与していることがわかった。現在、変異体と野生型Bap31に結合するタンパク質に違いがあるのかどうかを解析している。 2) QCコンパートメントの機能と形成機構 VCP(逆行輸送に関与するATPase)の変異体を動物培養細胞に発現させたところ、ERAD基質がQCコンパートメントに蓄積した。またこの時、アポトーシスを促進するBap31の分解物(p20)も生成した。これらの結果から、QCコンパートメントはERAD基質のサイトゾルへの輸送のドメインとして機能していることが示された。
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