小胞体は網目構造を有する連続した膜構造であるが、その中にいくつものサブドメインが存在する。クオリティコントロール(QC)コンパートメントは、プロテアソーム阻害剤を加えた時に、核近傍に形成される小胞体サブドメインとして見い出されたが、我々はBap31(Bcell-associated protein of 31 kDa)がこのコンパートメントの成分であり、核近傍と細胞周辺部を微小管に依存して循環していることを明らかにした。本年度はBap31の循環に関与する因子の同定を試みた。その結果、Bap31と結合するタンパク質の候補としてプロヒビチンとインポーチンを同定した。プロヒビチンは、最近、小胞体とミトコンドリアを繋ぐ構造体形成に関与することが示唆されており、QCコンパートメントがミトコンドリアに連関している可能性が考えられた。インポーチンはタンパク質の核への移行に関与しているので、Bap31はインポーチンと結合して核近傍へ運ばれているのかもしれない。また、興味深い知見として、Rer1(ゴルジ体から小胞体への逆行輸送に関与するタンパク質で、小胞体から誤送された膜貫通型タンパク質を小胞体へ戻す)の過剰発現によつて、Bap31が核近傍に集まるという知見が得られた。他の小胞体タンパク質の分布は変化しないので、この分布の変化はBap31が小胞体内を循環しているという性質と関連があると考えられる。Bap31はCFTRの小胞体関連分解に関与することが報告されているので、CD3δの分解におけるBap31の役割について解析を進めている。現在、分解のアッセイ系の構築を進めている。アッセイ系が構築できたら、小胞体内を循環しないBap31の変異体を発現させ、野生型の場合と比べて小胞体関連分解に関して差があるかどうかを調べる予定である。 研究協力者:米川周佑(東京薬科大学・生命科学研究科・博士後期課程)
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