変性タンパク質ストレスの細胞内防御機構の一つと考えられるアグリソームは、プロテアソームによるタンパク質分解が遅延するもしくはプロテアソームの機能が低下した時に作られる。この構造体の特徴として、中間経フィラメントタンパク質であるビメンチンタンパク質がその細胞内局在を大きく変化させ、中心体の近傍で中空のゲージ構造をとることが知られている。そこで、ビメンチンタンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質(GFP/RFP-vimentin)の安定発現株を樹立し、プロテアソーム阻害に応じたアグリソーム形成を生細胞内で可視化することに成功した。これにより、アグリソームの形成過程におけるビメンチンの局在変化は、あるときに一斉におこることがわかった。つまり、何らかのシグナルによりその局在変化が誘導されていることが示唆された。プロテアソーム阻害剤を除去してプロテアソームの機能を回復させると、アグリソームのビメンチンケ-ジは解消し、ビメンチンは細胞内で繊維構造をつくることから、アグリソーム形成が可逆的であることも確認した。また、アグリソーム内にはプロテアソームが蓄積していることが報告されているため、プロテアソームの20Sサブユニットの一つLMP2-RFPとの共局在を生細胞内でモニターしたところ、プロテアソームはビメンチンのケージが形成された後でそのケージの内側に蓄積することがわかった。これらの結果は、アグリソーム形成が高度に制御されたシステムであることを示している。今後、アグリソーム形成がどのような細胞内シグナルにより制御されているのか、明らかにしていく。
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