免疫制御受容体であるPIR-B/LILRBによる自己抗体産生の制御の機構を探る一環として、自然抗体の産生、PIR-B欠損における自己抗体の産生におけるTLR9の活性亢進機構を解明する。またそのシグナル伝達経路の中でどのポイントで制御が行われているか、同定する。PIR-B欠損において腹腔B-1細胞が加齢とともに増加する現象が見られていたが、B-1細胞からのIgMタイプのリウマチ因子(RF ; 抗IgG Fc自己抗体)の産生が亢進していること、さらにFas欠損との合併によりこの産生が顕著に亢進してIgGタイプのRFが増加し、糸球体腎炎を発症して死亡率が上昇することが明らかになった。この制御機構においてはTLR9の活性亢進が関係しており、PIR-B/LILRB欠損によってとりわけBtkのリン酸化が亢進してこれがTLR9下流のNF-κBのリン酸化亢進につながっていることが解明された(Kubo et al. submitted)。 よって今後はこのPIR-B/LILRBとTLR9との直接あるいは間接的な相互作用の分子機構を解明する方向で研究を進める。またB-1細胞が自然抗体、とりわけRFなどの自己抗体の主要なソースであることが明確になってきたため、これの細胞表面上のPIR-B/LILRBなどの制御受容体を賦活化させるアゴニストの開発、IVIg中の成分などの検索を行い、新しい免疫療法の開発に取り組む。
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