研究概要 |
胚中心B細胞おける抗体遺伝子の体細胞突然変異により、新たに自己反応性B細胞が出現する。しかし、この自己反応性B細胞に対する免疫寛容誘導機序の分子レベルでの詳細は未だ不明である。そこで本研究は、胚中心で自己反応性B細胞がアポトーシスにより排除される機序を、濾胞ヘルパーT(Tfh)細胞や濾胞樹状細胞(FDC)などから放出されるIL-21と、その刺激により胚中心B細胞に誘導されるBCL6の機能を中心として分子レベルで明らかにする。平成20年度は活性化IgG1 B細胞の分化誘導メカニズムの解析を行い、以下のようなことを明らかにした。 1) 成熟B細胞を抗IgM抗体、抗CD40抗体、IL-4で刺激した後48時間後にIL-21で刺激する系に、Tfh細胞やFDC由来の様々なサイトカインを追加刺激することで、活性化B細胞の長期生存能を解析したところ、IL-2の追加刺激により活性化B細胞がより長期問生存することを明らかにした。 2) 正常B細胞を上記1)の刺激系で活性化してB細胞の分化を検討したところ、IL-4の刺激ではCXCR4陽,性のCentroblast様の細胞が、またIL-21の刺激ではCXCR4陰性のCentrocyte様の細胞が分化することを明らかにした。 3) BCL6-KO B細胞(胚中心B細胞が分化できない)を上記1)の刺激系で活性化してB細胞の分化を比較したところ、IL-4の刺激ではCXCR4陽性のCentroblast様の細胞が分化するが、IL-21の刺激ではアポトーシスが誘導されてCXCR4陰性のCentrocyte様の細胞が分化できないことを明らかにした。 上記の研究成果は、生体内における胚中心B細胞の分化をIn vitor系で再現できることを示唆するものであり、ワクチン療法の開発へ向けた新しい研究の展開に道を拓くものである。
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